女性の更年期障害についてはよく耳にする機会があるかと思います。しかし、男性にも更年期障害があることをご存知でしょうか。
男性の更年期障害は「LOH症候群(加齢男性性腺機能低下症候群)」と呼ばれ、男性ホルモンのひとつであるテストステロンの低下が原因で起こります。
テストステロンには、筋肉や骨の成長、記憶力を高める、男性機能を正常に保つなどの働きがあります。
そんな様々な働きがあるテストステロンですが、アメリカのMAYO CLINICによると、男性のテストステロンレベルは40歳を過ぎて1年に平均約1%低下することが分かっています。
女性は閉経期間に起こる生殖ホルモンの急激な変化により、更年期障害による様々な症状を経験しますが、男性の場合は女性とは異なり、40代以降からテストステロン産生の低下により徐々に変化が起こるため、女性より長期に渡り変化に向き合う必要があります。
しかしテストステロンレベルが低下する生活環境の要因や期間、スピード等には個人差があるため、40代で症状を自覚する場合もあれば、シニア世代になり症状を自覚する場合もあります。
更年期障害と認識されないまま様々な症状に悩まされ、生活に支障を来したり、身体的、生理的、心理的な問題を抱える可能性もありますので、ご本人だけではなく、パートナーやご家族の方のサポートを得ながら対策に取り組んでいくことが理想です。
主な症状
男性の更年期障害の主な症状:
・筋力の低下
・モチベーションの低下
・睡眠障害
・体脂肪の増加
・性欲の低下
・記憶力、集中力の低下
・ほてりや多汗
・勃起不全(ED)
・骨粗しょう症
対策
様々な症状と長期に渡り上手に付き合っていくためには、生活に取り入れやすい対策を日ごろから心がけておくことをお勧めいたします。
適度な運動
適度な運動は、骨や筋肉を強化して筋力低下を防ぐ、心臓の健康を維持し慢性疾患のリスクを低減する、記憶力低下の予防など、様々な利点があります。
食事
・筋力の維持
卵、大豆、肉類、魚などの良質のたんぱく質を摂取することは、筋力の維持に役立ちます。
・テストステロンの低下予防
牡蠣、帆立、全粒粉パン、豚レバー、卵などに含まれる亜鉛は、テストステロンの維持だけではなく、骨粗しょう症や免疫低下、脱毛予防に役立ちます。
亜鉛はレモンなどに含まれるクエン酸やビタミンC、動物性たんぱく質と一緒に摂取すると吸収率が上がります。
・ストレスの緩和
気分が落ち込んだりする場合は、幸せホルモンと呼ばれるセロトニンを増加させる原料となるトリプトファンが多く含まれるバナナがおすすめです。
トリプトファンはナッツ類や大豆製品、乳製品にも含まれていますので、バランス良く献立に取り入れてみましょう。
・冷え対策
東洋医学では「冷えは万病のもと」と言い、テストステロンの低下や自律神経の乱れ等、様々な症状を引き起こしますので、慢性化する前に食事や適度な運動で改善したいところです。
生姜、ニンニク、玉ねぎ、ナッツ類は血行を促進し、血液のスムーズな循環に役立ちます。
また、良質なたんぱく質は筋力をアップし、冷えの改善に繋がります。
・腎機能低下予防
腎の機能が虚弱になると、生殖機能やホルモン内分泌機能が低下し、男性更年期障害になりやすくなります。
腎臓の負担を少なくするために、まずは塩分控えめでタンパク質のとりすぎには注意した食事を心がけましょう。
厚生労働省が定める1日の塩分の摂取量の目安は「男性7.5g未満、女性6.5g未満」で、1日のタンパク質の摂取量の目安は「18歳以上の男性60g、18歳以上の女性50g」を推奨しています。
・前立腺の健康
前立腺の健康を維持するために、ザクロが一役買ってくれます。
ザクロの果汁は抗酸化作用が極めて高く、赤ワインや緑茶の約3倍の作用があります。
2年に渡る臨床研究により、ザクロ果汁、皮、オイルに前立腺がんの広がりを抑える作用があることが示されており、米国では政府が資金提供し、その効果が研究されています。
1日につき250ml弱のザクロ果汁を飲むことを勧めています。
香り
男性ホルモンは睡眠中の副交感神経が優位のときに分泌量が増えるため、良質な睡眠とリラックスに効果のある香りを2つご紹介いたします。
香りが苦手な方は、良質で添加物の少ないアロマキャンドルを使用すると良いでしょう。
・ベンゾイン(安息香)
東南アジアが原産のベンゾイン(安息香)は、アンソクコウノキなどの樹木から採集した樹脂で、古くから宗教儀式や呼吸器系の治療、心を落ち着かせる目的などのために使用されてきた歴史があります。
スマトラ安息香とシャム安息香がありますが、甘いバニラのような香りがあり、品質の良いシャム安息香の方が個人的にはおすすめです。
・ラベンダー
ラベンダーの香りは副交感神経に働きかけ、心地用良い眠りに導きます。
また、鎮静作用があり、睡眠の質を改善する効果が期待できますので、睡眠前にラベンダーオイルやキャンドルなどの使用がおすすめです。
※症状の改善が見られない場合は、専門の医師の診察を受けることを推奨いたします。
≪参考文献≫
Amélie Michel, Anne de Formigny, Évelyne Duplessix. 2022. Ma Bible Hildegarde de Bingen: ©Leduc Éditions. 573p
Louise Robinson. 2021. SELF-CARE AROMATHERAPIE: ©Darling Kindersley Limited, London. 144p
Dクリニック東京:【なにが効く?】男性更年期の症状改善に有効な食べ物と自宅での対策 (menshealth-tokyo.com)
International Journal of Physiology, Nutrition and Physical Education 2019; 4(1): 1274-1277:4-1-317-920.pdf (journalofsports.com)
レベッカ・ジョンソン, スティーブン・フォスター, ティエラオナ・ロウ・ドッグ, デビッド・キーファー. 2014.『メディカルハーブ辞典』: 日経ナショナルジオグラフィック社. 383p
